南極猿手帖

だいたい音楽の話(邦:洋=2:8くらい)をしている人です。ライブに月1~3回くらい行ってます。

エリック・クラプトン 4/20 武道館レポ

良いことが3つあった。

ひとつ目は、新幹線を自由席で予約して良い席に座れたこと。

ふたつ目は、残額19円のICカードに2000円チャージしたら2019円になったことだ。2019年に2019円。ささやかにスペシャルだ。もっとも直後、山手線に乗って1849年になってしまったのだが。もうすぐ黒船がやってくる気がしている。

みっつ目は、エリック・クラプトン御大を武道館で見たことだ。嬉しさの割合で言うとみっつ目が九分九厘を占める。

 

正直に言うと、チケットを取った段階ではほとんどパンダを観に行くような感覚だった。有名だけど見る機会の限られているものを実際に見てみたいという好奇心に近いもの。

高校の時、彼のベスト盤をレンタルして聴いてみたが、いまいちピンとこなかった。あの「いとしレイラ」の人なので、すんごいミュージシャンには違いないのだが、I Shot The Sheriffでもう駄目だった。

古臭い、わかりにくい、盛り上がりがない。これらの悪言は作曲者のボブ・マーリーにも向けるべきだったのかもしれないが、とにかくニルヴァーナとRHCPを愛聴する高校生には色々と難しかった。

その後Tears In HeavenやMy Father's Eyeなど好きな曲はいくつかできるものの、依然として彼のブルースに根ざした音楽に入れ込むことはなかった。

 

 

それからオリンピック2回分くらいの年数が経ち、今回のライブが決まった。ライブはしっかり予習をする方なので、今回久し振りにエリック・クラプトンのCDを掘り返してみたところ。

 

 

驚くほどすっと入ってきた。ピンとこなかったI Shot The Sheriffに熱くなり、Wonderful Tonightでしっとりした気分になり、Bad Loveのリフを弾いたりした。どこが名曲なのかさっぱりわからなかったCocaineも好きになった。

何より発見だったのが、自分のブルースへの苦手がなくなっていたことだ。UnpluggedのBefore You Accuse Meの皮肉っぽい雰囲気を気に入り、口ずさむまでになった。

 

そんなわけで、未だに熱心なファンとは言えないながらも、有名曲は一通りわかるまでになって迎えた今回の武道館ライブ。今回の日本公演の最終日に当たる。

 

開演は5時。子供の門限かよと思いつつ4時30ごろに到着。

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チケットはかなり直前に取ったので、ステージサイドのA席だそうだが、ステージサイドってなんだ?と思っていたら文字通りステージの側にある、真横の位置だということがわかる。とは言え距離的にはかなり近いといって良い。むしろ普段は見られない角度で、近距離から見られるので特に不満は感じなかった。

 

客入りは上々。というかほぼ売り切れたんじゃないだろうか。(外でチケット譲ってくださいおじさんを見かけた。)あとライブ名物ダフ屋おじさんもいた。ダフ屋のおじさんがガラ悪いのはライブ名物だと思う。

流石に上の世代の人が多かったが、若い人も結構混じっていた。というか隣の席の子がママと一緒に来た小学生でビビった。わかるんだろうかと思ったら各所でテンション上げていたので好きなんだろう。小学生でエリック・クラプトン。英才教育だ。是非ワン、、、とかに走らずそのまま歩んでいって欲しい。

 

さて、五分ほど遅れて開演したライブ、開幕曲はPretending。始まりにふさわしい安心感がある。その後Key To The Worldをはじめとするブルースソングが続く。

今回帯同してるギタリスト(ドイルさんというらしい)がガンガンソロを弾くので、最初はもうギターは伴奏に徹するんかなと思ったが、途中からしっかりとソロを弾きだし、謎の安堵感を覚える。聴覚が衰えているという話も聴いて心配だったのをよそに、ギターも歌もそんな暗い兆候を感じさせないプレイだった。

 

間違いなく、全盛期ほどは指も動かないし神がかりなフレーズもそうそう出てこないのだろう。ただそれが気にならないのは、彼のステージングがとにかく「自然」に見えたからだと思う。

朝起きて歯を磨いて顔を洗うくらいの、自然な行動として、ギターを弾いて歌を歌っている。当たり前のことだから、見ているこちらも変に構えずに済む。60を超えたミュージシャンは、やっぱり全盛期を知っているだけあってなんだかハラハラすることが多いのだけれど、そういうものが不思議なほどなかった。

固唾ではなく、まあなんかお茶とか飲みながらリラックスして聴ける、それがエリック・クラプトンのブルースなのかもしれないと思わせられる。

 

そして今回自分の中ではハイライトだったのが、あのI Shot The Sheriff。今回のライブの予習をするうちに大好きになった曲だった。この曲は歌詞を知るともっと好きになれると思う。クールな曲調に怒りがよく表現されている。

 

ギターを持ちかえ、椅子に座ってアコースティックタイムに入る。Tears In Heaven、Layla、Running on Faithと怒涛の名曲続き。Tears In Heavenはアンプラグドよりも軽めのアレンジで柔らかに演奏された。青く照らされたステージが印象的だった。

本人は何百回演奏してきて飽き飽きしているかもしれないし、観客だって何百回と聴いてきた曲のはずだけれど、やっぱり特別なんだと思わせる雰囲気が感じ取れた。

 

その後エレキの編成に戻ってWonderful Tonight。方々でスマホのライトをつけている揺らめかせている人がいて、なかなかにワンダフルな光景だった。

 

また、その後Badgeが聴けたのは嬉しかった。クリームナンバーはそんなに積極的にやらないのかと思っていたので。この曲はギターより何よりメロディが好きなんだけど、なるほどジョージ・ハリスンも作曲に関わっているのだそう。納得。

 

本編最後はCocaine。最初は淡白な曲だと思っていたのに、今やあのリフを聴くとテンションが上がってしまう。なんという体にしてくれたのだろうか。コカインに反応する体、なかなかにやばみがある。観客も揃ってコカインコールをするのだが、日本人にとってなかなかタイムリーな話題の薬物だけあってちょっと変わった光景に見えた人は少なくなかったろう。

 

アンコールの曲名が出てこなかったんだけど、キーボードが歌い出したのにビビる。リアルで「お前が歌うんかい」と言い出しそうになった。会場のどこかで言ってた人もいるんじゃないかと思う。

 

そんな感じで、MCは一つもなく結構あっさり終わったライブ、なかなかに満足でした。個人的にはネイザン・イーストが見られたのが棚からぼたもち的で嬉しかった。5弦ベースかっこいいな・・・欲しいな・・・あと観客の声援に一番答えてたのはネイザンだった気がする。あの人絶対良い人だろ

 

 

そんなこんなで武道館を後にし、帰路に着く。ICカードの残額は1500円代に減っていた。もうすぐ鉄砲が伝来する気がしている。

 

 

Unplugged (Remastered)

Unplugged (Remastered)