南極猿手帖

だいたい音楽の話(邦:洋=2:8くらい)をしている人です。ライブに月1~3回くらい行ってます。

【Avishai Cohen】アヴィシャイ・コーエン・トリオ (3/3)BLUE NOTE東京レポ

去る3/3、ブルーノート東京にてアヴィシャイ・コーエン・トリオのライブがあったのでふわっと行ってきました。世界で一番好きなベーシストです。

f:id:takucat:20190305072514j:image

 

入り口には早速本人直筆と思しきコメント入りのポスターあり。

f:id:takucat:20190305072438p:image

I love Blue Note♡

ハート?かわいい48歳だ...。

 

さて、ブルーノートのあれこれについては別記するとして、場所は前から2番目くらいの超優良席。簀巻きになった自分が2人分並んだらもうステージくらいの距離でした。

 

ちなみにアヴィシャイ・コーエンの公演(殺してくれ)は去年のオーケストラとの共演の際にも行っているので、前回から1年も経っていなかったりするのですが、今回は全く性質の違うものでした。

なにしろ前回はアルバム「アルマー」を再現するコンサートだったのでジャズというよりオーケストラ編成のワールドミュージックといった趣が強かったのです。会場も普通にクラシックのコンサートホールだったし。そのうえ歌もあり、トリオのみの演奏もありと、実にアヴィシャイの多面的な音楽性を堪能できるものだったわけです。あとなんか丸いUFOみたいな謎の打楽器があった。

 

今回はブルーノートでの公演ということで、ある意味本領発揮というか、真価を存分に見られるライブでした。

今回、時期的にはニューアルバムのレコーディング直後とのことらしく、ほとんどが新曲で構成されていました。というか曲名がわかるものが1つもなかった。勉強不足なのか、本当に新曲ばかりだったのかはわかりません。

 

なのでどの曲が良かったというのを書きようがないんですが、それでも存分に楽しめた、というかロック系のコンサートより血が滾るような感覚が押し寄せてきたすごいライブだった...。

 

ジャズというと馴染みのない人にはお洒落な場所でお洒落な人達がお洒落ブルジョワなソファーに身を沈めてたり、バーカウンターではカクテルがどこからともなく飛んできて「あちらのお客様からです」と指し示す方を見るとバチェラーに出てきそうな男がウインクしてたりするような世界に思えるかもしれませんが、全然そんなことはなく、むしろ死ぬほど生々しい熱を帯びたステージだということがわかりました。

 

 

ウッドベースはアンプに繋がってるとはいえ、基本的にはアコースティックな音を増幅させてるだけだし、あとはピアノとドラムという最小限の編成。その3人だけで出せる極限値を叩くようなプレイ。電気的な歪みもないのにドスドス迫ってくる。

 

 

 

 

そして今回実感したのは、ピアノとウッドベースのユニゾンほど自分好みの音は無いということ。あの…曲名がわからないあれなんですけど冒頭からピアノの澄んだ音色に無骨でありながらも繊細にも響くベース音が同じ旋律を奏でると浮遊感というか透明感というか、それでいて芯がはっきりしているような、ちょっと怪しげでもある音をブンブン鳴らしてきます。

 

 

そんであの、曲名がわからないあれなんですけど、ピアノがある種エレクトロミュージックみたいな繰り返しの旋律を鳴らすと、ベースがそれに上手く乗って絡んでいき、なんか機械的なのに有機的という不思議サウンドになってめちゃくちゃかっこいい。

 

さらにあの、曲名がわからないあれなんですけどアドリブから戻るときのこれっていう瞬間にタイトなフレーズをピッタリ揃わせた時、これが鳥肌もののかっこよさ。

 

そんであの、曲名がわからないあれなんですけど、「ここにベースプレイヤーはいるかな?1,2,…7人。っていうのも、これから演奏する曲、本当に難しいからさ。自分で演奏しようと思わないことだね」っていうMCで笑いを誘ったあとに演奏した曲がマジで超絶プレイ過ぎて笑った。

 

あるいはあの、曲名がわからないあれなんですけどアヴィシャイが「これはこの才能溢れたドラマーをフィーチャーした曲だよ」と紹介して始まった曲がまたすさまじく、「あれ?このドラマー、キース・ムーンだっけ?」と錯覚するようなマシンガンっぷり。 会場の熱は最高潮になる。

 

 

さて、「さぁ始まったと思ったら、もう最後の夜。すごく楽しめたよ」というMCから始まったライブ。彼の英語は結構わかりやすいのでMCで笑いが起こることが結構あるんですけど、

「(前席のおじさまを指して)そこのあなた。名前は?」

「(遠慮して手を振りながら)いえいえ」

「いいから、名前は?」

「マサシ(仮名)」

「マサシ(仮名)、ありがとう。彼はこの4夜、全公演に来てくれたんだよ!」

ここで笑いと拍手が起こったのめっちゃほっこりだった。見てるかマサシ(仮名)。

 

 

あとメンバーの顔つきが全員めちゃくちゃ優しい好青年って感じ。ピアノとドラムは本当に人が良さそうでメンバー紹介されると手を合わせて微笑む様がめちゃくちゃナイスガイなんですけど、演奏が始まると鬼のテクニックを披露するのがすげえ楽しい。

 

 

で、今回アヴィシャイ・コーエンを間近(3mくらいだった)で見て思ったんですが、彼のベースは見ていて飽きない。というのも、多種多様な奏法を1曲の間にいくつも入れてくるからです。速さとかテクニックだけじゃなく、色んな顔が見えるのでずっと注意を持っていかれるわけでしてー。

 

 

ハーモニクスの多用、超ハイポジションでのピッキング(ベースってピッキングっていうのか?)、3つの弦を高速で鳴らす技法、弓弾き、なんか弓を叩きつけるクラシックの人から怒られそうな奏法(?)、パーカッションのようにベースを叩く、などなど本当に楽器を知り尽くしていることが伝わってくる演奏。

 

 

ドスドス迫力が押し寄せてくる疾風怒濤の1時間強。

もう気づくと彼らのビートが頭で鳴ってるまである。

うわっ…?私の発言痛すぎ…?

 

 

そうそう、曲名わからんとは言いましたがアンコールでやった一曲はAt Home収録の"remembering"でした。たまたままだAt Homeだけ聴けてなかったんで次回のライブまでに聴き込む。あとそのうち出る新譜も楽しみです。

ここ数年はほぼ毎年来日してくれてるみたいなんで来年も来てくれることを祈りつつ・・・。

 

 

どうでも良いけどバチェラーの男は赤い羽根募金みたいなやつを挿してるイメージがあったんですけど確認したら薔薇持ってるだけだった。なんであいつらこぞって薔薇持ってんの