南極猿手帖

だいたい音楽の話(邦:洋=2:8くらい)をしている人です。ライブに月1~3回くらい行ってます。

【The Kooks】来日決まった変人たちの話

ザ・クークスの来日が決まりました。「kook=変人」なので、空港の保安検査で止められやしないかと気が気でなりません。kooksで複数形なので、少なくとも2名以上の変人が日本の地を踏むわけです。怖い

 

さて2000年代のギターロックブームの代表各と言っても過言ではないこのバンド。

正直4thアルバム以降は全く追えていないんですが、アルバムとしては2ndが、曲のパンチ的には1stがかなり好きだったので、来日が決まる程度に人気が残っていたのはうれしいところ。たぶん行けませんが。行けないのかよ

 

クークスといえばデビュー時はアークティック・モンキーズと肩を並べてたくらいの、鳴り物入りバンドって感じのスタートだったんですけど、今やワールドクラスになったアクモンと比較するとかなーり失速してしまった感があり。何がこの2つのバンドの命運を分けたのか。ヒット曲、前衛性、そして何より速さが足りない いや違うな

 

ザ・イギリスのインディーバンドって感じの佇まいと音楽性が好きな人が多かったと思うんですけど、3rd以降はなんだか何をしてるのかよくわからないバンドになってしまいました。かくいう自分も3rdを買って以降は追えていません。

 

とはいえ、とっても丁寧にポップな曲を作りつづける姿勢は変わらず、バンドとして嫌いになったわけではもちろんないので、今日は久しぶりにYouTubeで聴いてみようかなと思います。

 


The Kooks - All the Time

 

ふむ。なるほど?

 

 

話は変わりまして(強引)、クークスを知ったきっかけとなった"Sofa Song"という曲がありまして、原曲は勿論なんですけどライブバージョンのローファイっぷりがすさまじくかっこいい。

「クール」を煮詰めたような曲調、アンプに直でつなぎましたみたいなザラザラした感触が合わさって最高。

 


The Kooks - Sofa Song (AOL SESSION)

 

あと、2ndアルバムの"Do You Wanna"。


The Kooks - Do You Wanna (Live Jools Holland 2008)

 

こうして聴いてみると、やっぱりいいバンドですね。さすが

 

来日公演、行ける人は是非行ってください。自分は多分行けません。行けないのかよ

 

なんか最近、00年代のバンドの名前を聞くと、「あいつ、今元気でやってるかなあ…」と高校時代の友人に思いを馳せるような謎のノスタルジーに襲われます。助けてください

 

 

Inside in / Inside Out

Inside in / Inside Out

 
Konk (Deluxe)

Konk (Deluxe)

 

 

高速道路とかで見える山間部の村落で暮らす妄想をする

高速道路をHighway Starを聴きながら爆走していると(法定速度遵守)、ふと山間部に集落が見えることがあります。まさしく、垣間見えるわけです。

 

畢竟、高速というのは高い所に走っているので、それら集落を見下ろす形になるのですが、上からだとジオラマのように見える町並みに自分を投影する遊びが好きというお話です。

 

 

 

山間部に見える時点でお察しですが、それはもう超がつくド田舎です。

 

農家が多く、あたりは田んぼと畑だらけ。

バスは1時間に1本。少ない時間帯は2時間に1本。

家から20分ほど歩いたところに漸く無人駅が一つ。ドが付くローカル線に1時間揺られて、やっと街まで出られる。

買い物と言えば地域に1つだけのこじんまりしたスーパー以外に選択肢はなく、遊びに行くには電車か車で1時間ほどかけて市内のショッピングモールに繰り出すしかない。

 

学校は村に一つしかない。子供は多くないので、当然のように1学年には1クラスしかありません。同級生はもちろん村の子供はみんな知り合いです。農家の子どもが多いけれど、佐々木さんとこは中学校の先生の息子さんで、田村さんとこは郵便局員とこの娘さん。小さくて閉鎖的で、けれど他にコミュニティが無いだけに、安定はしている人間関係。

 

高校は一番近いところでも通学に30分以上はかかるので、このあたりから県外に出ていく人間もいて、高校を出ればほとんどが村からいなくなります。帰ってくるのは、地元の役場で就職する者、農家を継ぐ者。全体から見れば微々たる存在。

 

いよいよ村を出ていく最後の年、なんだかんだ面倒がりながらも毎年出てきた地元のお祭りでノスタルジックな気分に浸ります。「もしかしたらこれが最後の祭りになるかもしれないな」なんて考えていると、視界にお向かいに住んでいる娘さんが写ります。

出店を出しているのも全員見知った顔なので、堂々と声をかけるのが躊躇われるところです。だって昔から、あなたはその娘のことを…。

 

 

というところまで想像することは流石にないのですが、自分にもあったかもしれないカントリーライフを夢想でもしないと高速道路は眠くてしゃーない。眠いゲン。

 

何が言いたいかというと、そんなド田舎の林業を舞台にしたWOOD JOBという映画が中々面白いので観ると良いという話です。

 

 

 

 

消臭元がドイツ語だった

消臭元といえばミゲル・ゲレイロくんの美声が有名なCM、だと思っていたらそれは別商品の消臭力の方だったそうで、高い製作費を負担しておきながら小林製薬の商品と混同されるエステーに深い同情を禁じ得ない。

 

ところで「消臭元」をローマ字に変換すると"shoshugen"になるわけだが、これがなんともドイツ語っぽいという気づきを得て、一人狂熱の渦中にいる。

ご存じの通りドイツ語検定4級を保持している上位ドイツ語話者のワタクシが脳に蓄えているドイツ語彙は優に2ケタを数えるわけだが、ここで代表的なドイツ語を羅列してみる。

 

kugelschreiber(ボールペン)

waschen(洗濯する)

schwimmen(泳ぐ)

shoshugen(消臭元)

freuen(うれしい)

total(完全に)

 

馴染んでいる。なんならtotalとかよりドイツ語感が強い。

 

ポイントは~enにある。

ドイツ語は主語によって動詞の語尾が変化するが、原型は~enで終わるものがほとんどである。殆どの文章を作るためには動詞が不可欠なので、~enをみかける頻度は爆裂に高い。そのため、shoshugenはドイツ語の動詞っぽさが強い。

 

しかし、~ゲン、で終わる日本語は他にもたくさんある。

高原⇒kogen

最低限⇒saiteigen

人口減⇒jinkogen

 

ではなぜshoshugenが抜きんでてドイツ語感が強いのか。

それは、何やってんだろう感が強くなってきたのでもういいかな感が漂ってきている感。眠いゲン。

 

 

しあわせソングス★はじめまして、ミゲルです

しあわせソングス★はじめまして、ミゲルです

 

 

【Giovanni Allevi】名古屋 レポのようなあれ

今年で4年目になりますが、ジョヴァンニ・アレヴィのコンサートに行ってきました。

Go With The Flow、Downtown、Prendimiなどなど定番ソングは勿論、新旧の名曲が聴けてかなり良いセットリストでした。

 

何より、PanicVento D'Europaが聴けたのが本当にうれしかった。

Panicは曲名とは裏腹に休日の朝の静かーな気持ちにさせてくれる癒しの曲で、逆にVento D'Europaは孤独が音となって波のように押し寄せてくる曲。

PanicはともかくVento~はちょっとマイナーな曲っぽかったので非常に嬉しみである。

 

さて今年は演奏が始まる前にちょっとした小話があったんですが、それが結構印象的でした。

 

去る29年前、当時21歳のジョヴァンニがイタリアの劇場で初のコンサートを催した日のこと。このころはクラシックのレパートリーを弾いていました。

今でこそ5万人を動員するイタリアきってのスターですが、当時はなんと5人の観客しかいなかったそうで。あまりの客の少なさに、コンサートをやっていないと勘違いした人がドアを大きな音を立ててガシャンと閉めるなんてことも。見かねて、観客の1人である婦人が「こんな状況なら、演奏できなくても誰も責めないわ」と声をかけてくれたそうです。

前途が思いやられるスタートで、バッハを弾きながらとても惨めな気持ちになったとのこと。

しかし、その後ショパンを弾いたところ、先ほど声をかけてくれた婦人がそれを聴いて涙を流していたそうです。

 

その後コンサートが終わって、宿もなく、途方に暮れながら駅へ歩いていきました。駅ではその日使った楽譜を見ながら、一日のことを振り返ります。

そのとき喚起された感情が、「これが芸術だ」と言えるものだった、と。そんなエピソードでした。

それから時は立ち、自作曲で人気を獲得したジョヴァンニは大きな会場でコンサートを開き、前列にあの時の婦人が座っていることに気が付きます。

「ね、あなたはきっと人気になるってあの時言ったでしょう?」と。

 

かっけぇ。押しも押されもせぬイケメンである。

 

 

今では日本で言うと多分坂本龍一とかそのへんのレベルのスターのなんですけど、こんな過去もあってあれほど琴線に触れる音楽を作れるんだなあと思った次第です。

来年も来たら絶対行きますが、そろそろ夏以外に来てほしいなと思ったりします。

 

でも行く。

 

 

Equilibrium

Equilibrium

 

 

 

ジョヴァンニ・アレヴィ Tokyo Stationですっとエモくなる

ジョヴァンニ・アレヴィが大好きで毎年コンサートに行ってるんですけど、今回のコンサートに行く前にTokyo Stationを聴いて改めて良いなと。

 


Giovanni Allevi - Tokio Station

 

彼の曲は叙情的なメロディが魅力ではあるんですけど、流れてるリズムや音の飛び方、曲の展開ががどこか「ヘンテコ」なところがフックになっている気がします。

 

Tokyo Stationはコンテンポラリーな雰囲気で、ロックみたいなリフで始まったかと思ったら、ふっとめちゃくちゃエモい展開になっていって、このあたりの勾配でぐわんぐわん感情を揺すられます。

 

エモくない曲が急に調性感を出して、すっとエモくなる。この方法論は結構「面白い曲」のカギなんじゃないかと、ふと思いました。

 

さてー。コンサート楽しみー。

 

『蜜蜂と遠雷』が漫画だった

蜜蜂と遠雷直木賞本屋大賞受賞の長編小説で音楽モノってことで読んだんですけど、上下巻で800ページ?くらいあったんですがさらっと読めました。

 

恩田陸先生の名前は知ってましたが読むのは初でした。文体は口語が如何にも口語っぽいところ以外癖もなく読みやすかったです。

 

物語は導入以外は基本的にずーっとひとつのコンクールを追っているもので、型破りな天才と、正統派の天才と、復帰した元天才と、自覚する凡人とが主人公で、それぞれのバックグラウンドがユニークでした。

 

あと、音楽を完璧に小説に落とし込むのってもう無理じゃないですか。どれだけ精緻で明晰で豊かな表現力で書いても伝わりきるわけないわけです。

なのでこう、表現の仕方が単調だったり、興奮が伝わりづらい描写だったりするといまいち読者も乗れない(ラノベとかのライブ描写によくある)わけですが、もうあらん限りのメタファーと殆どファンタジーな表現を駆使して、「とりあえずなんかすげえ」ことが何故か視覚的にわかるという、なんだか漫画みたいな感覚で読める小説でした。

 

ピアノコンテストの運営についても、まあどこまで事実かわかりませんが勉強になったし、素直に読んで良かったです。

 

あと自分はピアノは弾けないんですけど楽器が触りたくなってきます。登場人物に当てられて、アホほど楽器を練習してみたくなる。

 

そんな感じで、クラシック詳しくない人も楽しいので読むとよろしいと思います。

 

 

蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫)

 

 

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

 

 

 

結局、実験的な音楽とは何なのか?みたいな話

ふと、「実験的」な音楽ってなんだろうなあと考えてみました。

 

レディオヘッドとか、


Radiohead - Idioteque (Official Video)

 

Public Image Ltdとか、


Public Image Limited - Death Disco

 

キャプテン・ビーフハートとか、


Captain Beefheart & His Magic Band - German TV 1972

 

なんかいろいろありますが。

 

「実験的」を辞書で引いてみると、「ためしに行なってみるさま。 」みたいな定義が出てきたりするわけですが、人が聞いて「実験的だなあ」と思う音楽というのはちょっとこの定義からはずれる気がしています。

 

たとえば新しいところだと玄米法師、じゃない米津玄師さんとか星野源さんなど。

曲の中に他人があまり使わない音色(ウェッ)を入れたり、ポップスっぽくない音階を使ってみたり(フラミンゴとか)と「実験的なパーツ」はふんだんに使われているわけですけど、曲としてはとてもすっきりまとまっていて、ポップス以外の何物でもない仕上がりになっております。

 

じゃー結局、実験的ってなんだと思ったので、自分が「実験的だ」と思った曲を思い返してみました。

 

This Heat "Horizontal Hold"


This Heat - Horizontal Hold [HD]

 

Public Image Ltd. "Flowers of Romance"


Public Image Ltd.- The Flowers Of Romance (Top Of The Pops) 1981

 

John Frusciante "Same"


John Frusciante - Same - Outsides EP (New Song 2013) - HD

 

 

 

ストパンク多いな。

 

 

 

で、考えてみたところ、ここで共通するのが、

「その曲に対してどういう感情が喚起されるべきか分からない」ことかなと。

 

「実験的」ってのはそれだけ理解しがたいことを言うと思うんですけど、「初見(聴)時にどうリアクション取ったらいいかわからない音楽」ってのは割と定義としてアリな気がしています。

 

言い換えると、その曲を聴いて楽しい気持ちになればいいのか、悲しい気持ちになればいいのか、クールな気分になるか、血が沸き立つようなものなのか。

それが一聴してわからない曲ということになります。

 

 

まあだとすると、「実験的だなー」という印象を持たせつつも売れる音楽を作るってのはめちゃくちゃ大変な作業だなあと思う次第です。だってリアクション取りづらい音楽を繰り返し聴こうとは普通思わないですからねー。

 

 

そういう意味ではやっぱりレディオヘッドの「OKコンピューター」やピンク・フロイドの「狂気」なんかは絶妙に実験的でありながら感情の琴線にも触れるポップな面もあって、やっぱり偉大な作品だなと思い知らされております。あとビートルズのホワイト・アルバム。No.9はやりすぎ。